夫婦間の別居には様々な理由があります。お互い冷静になるために少しの間距離を置く場合、離婚を前提として別居する場合、夫が単身赴任をする場合など、理由は夫婦によって異なります。 別居中の場合、他の異性と関わりやすくなりますが、法的にどこまでの行為が許されるのでしょうか。
この記事では、夫婦の別居中にしてはいけないことを分かりやすく解説します。
離婚のために別居してもいい?
夫婦間の合意があれば、離婚のために別居しても問題ありません。ただし、一方が別居に合意していないにもかかわらず、一方的に別居しようとすると問題となる可能性があります。
夫婦には同居義務があり、互いに協力し扶助しなければならない義務があります。
そのため、別居をしたくない当事者は相手方に対して同居を請求することができ、相手方が同居の請求に応じない場合、別居したくない当事者は、家庭裁判所に申し出ることができます。
結果、裁判官から、別居について正当な理由がないと判断された場合は、同居を命じられることになります。
別居中の貞操義務
先述したとおり、夫婦間の合意があれば、別居することは法的に問題ありません。
ただし、法律上、「婚姻共同生活の平和の維持という権利」があるため、別居中であっても夫婦間で貞操義務は存在するのです。
そのため、合意の上での別居であっても、不貞行為などにより夫婦間の婚姻生活の平和が破綻すれば、貞操義務違反となります。
ただし、後述しますが、すでに夫婦関係が破綻している中での別居であれば、不貞行為に当たらないなど、別居中の貞操義務についてはケースバイケースです。場合によっては貞操義務違反にならないことがあります。
別居中してはいけないこと6個
1. 不貞行為
別居中であっても貞操義務は存在します。そのため、別居中の不貞行為は当然問題となります。
不貞行為とは、「既婚者が配偶者以外の異性と自由意志で肉体関係を持つこと」とされており、不貞行為が原因で、夫婦生活が破綻した場合は貞操義務違反となります。
例えば、夫婦関係が円満であるにもかかわらず、単身赴任中に他の異性と肉体的な関係をもった場合などは、完全に不貞行為となります。
不貞行為を行った当事者は、その行為を理由に離婚を請求されたり、多額の慰謝料を請求されたりする可能性があります。
2. 生活費を渡さない
夫婦間では、婚姻期間中に「その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」ことが法律で定められており、収入の低い方が収入の高い方に生活費の分担を求めることができます。
別居中であっても夫婦であることには変わりないので、収入の高い方は相手方に生活費を渡す必要があります。
例えば、婚姻関係が継続しているにもかかわらず、夫が別居中の奥さんに一切生活費を振り込まないのは法律に抵触します。
また、子供と一緒に住んで養育している場合は、子供の分の生活費も渡す必要があります。
3. 相手に嫌がらせをする
別居中の配偶者への執拗な嫌がらせは問題となります。
配偶者へ嫌がらせをするケースとしては、離婚に向けた別居中で、離婚条件に不満がある場合や離婚を拒否している場合が多いと考えられますが、その行為が「婚姻を継続し難い重大な理由」に該当する場合、離婚が成立しやすくなったり、精神的苦痛による慰謝料を請求される可能性があります。
例えば、一日に何度も執拗に連絡をしたり、待ち伏せするなど不当に接近した場合などの行為が挙げられます。
4. 子どもを強引に連れ戻す
配偶者が勝手に子どもを連れていってしまった場合、何とか子どもとまた一緒に過ごしたいと思って連れ戻したいと思うこともあるでしょう。
しかし、強引に連れ戻す行為は後々不利に働く可能性があるため、やめておきましょう。
法律では自力救済が禁止されているため、子どもの引渡し手続きをとるようにしてください。
5. 相手からの連絡を無視する
離婚について相手から連絡が来ているにもかかわらず、無視し続けていると、離婚の際に不利になる可能性があります。
また、相手が弁護士に依頼してそちらからの連絡も無視していると、相手方の主張が通り、事態が進んでしまうこともありえます。
相手からの連絡に対しては、ある程度返したほうがいいでしょう。
6. 無断で共有財産を処分する
相手に無断で共有財産を処分すると、離婚の財産分与の際にトラブルになります。
例えば、婚姻期間中に購入した車などが当てはまります。
夫婦の共有財産や相手のものは、勝手に捨てたり処分したりせずに、話し合って扱いを決めるようにしましょう。
別居中に異性と遊ぶのは?
別居中に異性と2人きりで遊ぶことは、控えた方がよいと思われます。法律上の不貞行為は、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶことなので、性行為を行わず、単に異性と遊ぶことは貞操義務違反にはなりません。
ただし、異性と2人きりで遊ぶことが不貞行為であると主張する当事者は意外と多く、法律上は問題無くても、後々トラブルに発展する可能性は十分にあり得ます。
なので、たとえ友達であっても、異性と2人きりで遊ぶなど、配偶者を不快にさせる行為は行わないのが賢明であると考えられます。例えば、誰か別の人を誘って2人きりにならないようにすることをお勧めします。
別居中に異性との食事デートは?
別居中の異性との食事デートについても上記と同様に控えた方がよいと思われます。先述したとおり、性的関係を結ばない場合は、貞操義務違反には該当しませんが、2人きりで食事をするなど、配偶者を不快にさせる行為はトラブルの原因ともなります。
また、すでにお付き合いが始まってからのデートとなると、不貞行為に及ぶ可能性はゼロではなく、慰謝料発生のリスクもあります。
特に単身赴任中の別居の場合は、配偶者の自宅に生活感がなく、既婚者であることを忘れてデートを重ねてしまい、不貞行為に及んでしまうかもしれません。
そのため、別居中に異性と2人きりで食事デートをすることはあまりお勧めできません。
別居中の異性との連絡は?
別居中に異性と連絡をとっているうちに、その異性と会って不貞行為を行うと有責配偶者になるおそれがあります。
連絡をただとっているだけであれば問題になりませんが、交際を疑われるような内容だと、問題になるおそれがあります。
深い関係になるような連絡はしないようにしましょう。
別居中に好きな人ができたら?本気の恋愛は?
好きな人ができることは悪いことではありませんが、デートしたり付き合ったりすることは別問題です。好きな人ができた場合も上記と同様で、2人で食事したり、デートしたりすることは控えたほうがいいでしょう。
性的関係がない場合でも問題になる可能性があります。
遊びではなく本気の恋愛であっても、恋人関係になることは避けたほうがいいでしょう。
別居中でも貞操義務違反にならない場合4個
1. 離婚を前提としている
離婚を前提にした別居であることをお互いが認識しているのであれば、貞操義務違反は認められません。お互いが離婚に合意した時点で、夫婦関係は破綻していると考えられるからです。
そのため、離婚が前提にあれば、別居中に異性と肉体関係をもったとしても貞操義務違反とはなりません。
2. すでに夫婦関係が破綻している
別居しており、すでに夫婦関係が破綻した状態の場合には貞操義務違反は認められません。
貞操義務違反は、不貞行為により夫婦関係が破綻した場合に認められるものです。そのため、すでに夫婦関係が破綻しているのであれば、別居中に異性と肉体関係をもったとしても貞操義務違反とはなりません。
3. 別居期間が長い
別居している期間が長い場合、夫婦関係が破綻していると考えられるため、貞操義務違反は認められない可能性があります。
特に別居期間の基準について定めはありませんが、大体は婚姻期間と比して判断されます。
ただし、別居期間が長くても、頻繁に会っていたり、単身赴任により長期間離れていたりした場合は、夫婦関係が破綻しているとは言えないので、不貞行為を行った場合、貞操義務違反が認められることになります。
4. 異性と肉体関係をもたない
配偶者以外と性的関係をもつことが不貞行為とされているため、異性と肉体関係をもたないのであれば貞操義務違反とはなりません。
例えば、配偶者と別居中に、異性と2人で出掛けたり、キスやスキンシップをすることは、法律上の不貞行為には該当しません。
ただ、法律上は問題無くても、夫婦関係の悪化やトラブルの原因となるので、このような行為は控えるべきであると思われます。
まとめ
すでに夫婦関係が破綻していたり、異性と肉体関係をもたないのであれば、貞操義務違反とはなりません。ただ、夫婦間のトラブルを避けるためにも、相手が不快に感じる行為は避けるべきであると思われます。
離婚が前提の別居であれば、離婚が成立してから他の異性と付き合うのが賢明です。いずれも、不安があれば弁護士に相談しましょう。
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