※この記事は弁護士が執筆しています。
離婚調停は家庭裁判所において調停員2名を交えて離婚に関する話し合いを行う手続きです。
離婚調停でも離婚について合意できなければ離婚裁判を起こす必要があり、さらに時間と労力を費やすことになるため、できれば離婚調停により離婚問題を解決できることが望ましいといえます。
今回は離婚調停における注意点、やってはいけないことについて解説します。
参考:離婚の種類4つ
離婚調停中にやってはいけないこと4個[生活]
1. 異性との交際
離婚調停中でも離婚が正式に成立していない以上、法律上夫婦関係は続いています。そのため、離婚調停中の配偶者以外の異性との性交渉は不貞行為となり、相手配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。
夫婦関係が破綻した後の異性との性交渉は不貞行為にはならないとされていますが、仮にそのように判断されるケースでも、離婚調停中の配偶者以外の異性との性交渉の事実は調停員に悪印象を与える可能性があります。
2. 相手方に不平・不満をぶつける連絡
離婚調停は夫婦喧嘩をする場ではなく離婚に向けた話し合いの場です。また破綻した夫婦ですから相手方に対する不平・不満の言葉は誹謗中傷と言われてもおかしくない言葉になりがちです。
そのような言葉を相手に投げかけることは調停員に悪印象を与えます。ですから、離婚調停中に相手方に対して不平・不満をぶつける連絡は控えましょう。
3. 子どもを連れ去ること
未成年の子は両親の共同親権に服しますが、離婚調停中に相手方のもとにいる子どもを連れ去ることはやめましょう。
そのような行為はむしろ親権者の指定において非常に不利に働きますし、最悪、犯罪行為にもなり得ます。
もっとも、子どもが虐待を受けているなどの事情がある場合には、児童相談所に連絡するなどして緊急的に子どもを取り戻すべきケースもあるでしょう。
4. 財産分与の対象になる財産の無断処分
財産分与とは離婚に伴い夫婦共有財産を清算するものです。財産分与は離婚について有責性のある者でも請求できます。
ですから、たとえ相手の浮気により離婚になるようなときでも、財産分与の対象になる財産を勝手に処分するのはやめましょう。
離婚調停中にやってはいけないこと8個[当日]
1. 無断欠席
調停の期日を無断欠席すると裁判所にも相手方にも迷惑を掛けることになります。もし、諸事情により期日に出頭できないのであれば、事情を書記官に連絡して、別の期日に変更してもらうようにお願いしましょう。
調停を無断欠席すると、5万円以下の過料を科せられる可能性があり(民事調停法34条)、調停員に悪印象を与え、話し合いがスムーズに進まなくなる可能性があります。
2. 安易に合意すること
一度調停で決まったことを後に変更することは容易ではありません。ですから、離婚調停において安易に合意してしまうと後悔することもあります。
内容がわからないのであれば、具体的に説明してもらいましょう。合意するか迷う場合には次回まで検討しますと言って、その日の調停では回答しないことも大切です。
3. 撮影・録音
離婚調停を含めた家事調停の撮影・録音に関しては、法律により裁判所の許可のない限り認められません(家事事件手続規則126条2項・民事訴訟規則77条)。
そのため、裁判所の許可なく調停の内容を撮影・録音することはやめましょう。
なお、裁判所に許可を求めた場合でも、余程の必要性がない限り、調停の撮影・録音は許可されないでしょう。もし調停の無断撮影・無断録音が発覚すれば、調停員に悪い印象を与えることは間違いないでしょう。
4. 調停員と喧嘩すること
調停員はあくまで仲裁役であり、どちらか一方の味方ではありませんから、あなたにとっては耳の痛いことも言ってくるかもしれません。
とはいえ、調停員と喧嘩してしまうと、調停員はあなたより相手の肩を持つようになってしまうかもしれません。調停員から多少強引に譲歩を迫られたとしても拒否すればいいのです。
5. 必要な資料の提出拒否
離婚調停では必要な資料の提出を求められることがあります。資料がなければ話し合いが進まず調停が不成立になることもあります。
資料の提出は正当な理由のない限り拒否しないことが無難です。
6. 不要な個人情報の記載された資料の提出
離婚調停において提出する資料に調停とは無関係の第三者に関する記載がある場合や相手方に秘匿したい個人情報の記載がある場合は、マスキングするなどして提出しましょう。
提出資料について、その写しを相手方に渡してもいいか調停員から聞かれることがありますから、そのときにはその資料に記載されている事項をよく確認してから回答するようにしましょう。
7. 嘘をつくこと
調停は当事者が一緒の場で話し合うというより、当事者の一方が交互に調停員と話し合うスタイルが一般的です。
相手方に言いたくないことでも調停員には素直に話すほうがよいでしょう。嘘がバレると調停員はあなたが嘘をつく人間であると思うでしょう。
同様に提出する資料を偽造することも当然すべきではありません。調停員に話したことで相手方に伝えてほしくないことについては、あらかじめ調停員にその旨を伝えましょう。
8. 感情的になる
離婚調停において感情的になってしまうと、色々なデメリットがあります。まず、感情的になると合理的な判断、柔軟な判断ができず、そのせいで調停が不成立に終わってしまうことがあります。
また、感情的になり相手方に対する罵詈雑言を発すれば、調停員に悪い印象を与えてしまいます。調停では、譲歩できること、できないことを事前に決めておき、冷静に対応しましょう。
離婚調停中に泣くのはNG?
離婚調停中に泣くこと自体絶対にだめではありませんが、泣いたから調停が有利に進むということはないでしょう。
むしろ泣いてしまうのは調停において感情的になっている証拠でもありますから、できれば泣かないほうがいいでしょう。
調停において大事なのは感情論より、筋の通った主張とこれに関連する資料の提出です。
離婚調停中に相手の連絡を無視するのは?
離婚調停中は相手方との直接の連絡は控えるべきです。相手に伝えたいことは調停員を介して伝えましょう。
もし、離婚調停中に相手から直接連絡があったときには無視してもよいですが、それでも連絡がやまないときには、メールなどで調停員を介して言いたいことを伝えるように言いましょう。
但し、子どもの急病等の緊急の連絡の場合もないとは言い切れないため、そのような連絡であれば無視することなく対応してよいでしょう。相手の連絡を無視することが調停において不利に働くことはないでしょう。
離婚調停中の過ごし方
離婚調停中の過ごし方として大切なことは、まず自分自身の離婚に関する希望をはっきりと決めておくことです。
離婚するのか、しないのか。離婚するとして、子どものこと、お金のことをどういう内容で解決することを望むのか。どこまでのことは折れることができるのか。
こういったことを予めはっきりとさせておくことが大切です。
また、離婚調停は裁判のように証拠の提出が厳格に求められるわけではありませんが、自分の希望する内容を調停員に対して相手方に強く説得してもらうには、ある程度証拠を用意して示すことも大事です。証拠があれば、最終的に裁判になっても相手方はそれを飲まざるを得ないことが多いからです。
相手に対する連絡は控えましょう。調停の期日以外で一切やりとりしない態度を示すことにより、相手方がこちらの意志が固いことを察して離婚に応じてくれることもあるでしょう。
離婚調停中に相手から嫌がらせを受けたときの対処法
家庭裁判所は離婚調停の当日、当事者同士がお互いに顔を合わせることがないように、出頭する時間をずらすなどの配慮をします。
しかし、調停外での当事者の接触については裁判所も関知できません。
もし、相手方が執拗に連絡してきたり、家を訪問してきたりした場合には警察に相談しましょう。
メールや電話などで脅迫めいた言葉を執拗に投げかける行為は強要罪や恐喝罪になり得ます。また、家に直接訪問してきたような場合には住居侵入罪・不退去罪が成立する可能性があります。SNSなどの書き込みによる誹謗中傷は名誉毀損罪になりえます。
離婚調停を有利に進めるためにやったほうがいいこと3個
1. 調停員に信頼してもらう
離婚調停を有利に進めるためのポイントの1つは調停員の信頼を得ることです。調停員は夫婦双方から話を聞いてそれを相手に伝え、調停の成立すなわち合意に至るよう当事者を説得します。
調停員からの信頼を得れば、調停員はあなたの希望に沿った内容で解決できるよう積極的に相手を説得してくれる可能性があります。
調停員からの信頼を得る方法は誠実であること、そして自身の主張を証拠・資料を添えて伝えること、問題解決に向けて柔軟に対応できる姿勢を見せることです。
2. 事前の準備をしっかりする
次に大切なのは、調停のためにしっかり準備することです。
具体的には、まず離婚条件について自分自身の優先順位や最善と最悪な場合を決めておくようにしましょう。次に、調停において調停員や相手に提示する資料を収集しておきましょう。
この2つの準備をしっかりとしておけば、落ち着いて調停に臨むことができ、当日も自分の考えや相手の要望に対する回答を適切にすることができるでしょう。そして証拠や資料に基づく主張は説得力を持ちます。
3. 弁護士に相談(依頼)する
最後に離婚調停の始まる前に一度は弁護士に相談することをおすすめします。
・離婚調停はどのようなもので自分の要求は不当ではないか
・もし調停が成立しなければ、どのような結果になるのか
・収集しておくべき証拠・資料はどのようなものか
などを事前に弁護士に聞いておけば、先ほどの事前準備はより確かなものになるでしょう。
また、弁護士に相談した上で弁護士費用の捻出について納得するのであれば、そのまま離婚調停の代理人になってもらうよう依頼することも有効な選択肢の1つでしょう。
まとめ
離婚調停は家庭裁判所において調停員を交えて離婚について協議する手続きです。離婚調停中は離婚についての話し合いは調停の当日にすべきであり、それ以外での直接のやりとりは控えるようにしましょう。
そして、調停当日に調停員から信頼を得ることができるよう、自身の主張や意向を整理したり、提示すべき証拠・資料を収集したりするなどの事前の準備を欠かさないようにしましょう。
また、適切な事前準備のために一度弁護士に相談することもおすすめです。離婚調停の段階から弁護士に依頼することもでき、弁護士があなたの代理人として調停に出頭してくれるため、安心です。
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