別居中の生活費相場と計算方法!子供あり・共働き・請求は?

別居中の生活費相場と計算方法!請求方法4個

離婚に向けて別居中の場合でも、収入が高い方は生活費を払わなくてはなりません。生活費の額は、まずは夫婦の話し合いで決めるべきですが、話し合いで決まらないときでも調停などで決めることができます。

この記事では、別居中の生活費の算定方法と、相手が支払ってくれない場合の請求方法について解説します。別居中の生活費にお困りの方などはぜひ参考にしてみてください。

目次

別居中の生活費は分担が義務?どう考える?

夫婦は、別居中であっても婚姻費用の分担義務を負います。「婚姻費用」とは、夫婦生活を送るうえで必要な費用のことです。日常的な言葉では生活費の意味で考えておいて問題はありません。

婚姻費用をどちらが分担するかは、夫婦の収入状況などを考慮して決まります。そのため、収入の高い方が婚姻費用を負担するのが通常です。たとえば、会社員の夫と専業主婦の夫婦で夫が家を出た場合、妻は、夫に対して婚姻費用を請求できます。

婚姻費用は、夫婦である限りは分担しなければならないものです。そのため、別居中であっても、離婚調停中であっても離婚が成立しない限りは婚姻費用の分担義務はなくなりません。

ただし、別居の原因が婚姻費用を請求する側にある場合には、婚姻費用の請求が認められないこともあります。たとえば、婚姻費用を請求できる立場にある妻が不倫をして自ら家を出たような場合には、婚姻費用の請求は認められないでしょう。

別居中の生活費相場

別居中の生活費には、自分と子どもが生活するのに必要な費用は全て含まれることになります。衣食住に必要な費用はもちろんのこと、教育費や緊急の医療費なども含まれます。

ただし、請求できる生活費の額には制限があり、夫婦の収入に見合った生活ができる程度の金額が限度です

裁判所の統計では、家庭裁判所で決まった婚姻費用の額としては、月額6万円から15万円までの額が6割超となっています。

具体的な生活費の額は、夫婦の話し合いによって決められるのであれば、その金額となります。話し合いでは決まらない場合には、弁護士に依頼する、婚姻費用分担の調停を起こすなどの方法によって金額を決めることになります。

別居中の生活費の計算方法と算定表

別居中の生活費の金額を決めるための明確な計算式などはありませんが、話し合いで決まらない場合には、裁判所の「算定表」を基準に金額を決めることが多いです。

算定表は、裁判所における統計などの研究によって、夫婦の収入や子どもの人数などから妥当と考えられる婚姻費用の額を示すものとなっています。

参照:裁判所「養育費・婚姻費用算定表」

①使用する表を選択する

算定表は子どもの人数と年齢によって分類されています。子どもの人数と年齢から使用する表を選択しましょう。なお、算定表は養育費のものと婚姻費用のものがあるので、注意してください。

②義務者(タテ軸)と権利者(ヨコ軸)の年収から交わるポイントを確認する


※上の図は夫婦のみで義務者が給与600万円、権利者が給与400万円の場合

算定表の金額を確認するには、婚姻費用を支払う側の義務者の年収欄からは右に直線を引いて、請求する側の権利者の年収欄からは上に直線を引いて、交わるポイントを確認します。

算定表の年収欄は、「給与所得者」と「自営業者」とで分けられています。

給与所得者の年収は、源泉徴収票で簡単に確認することが可能です。

自営業者の場合は、確定申告書の課税所得額が年収となります。ただし、自営業者の中には、確定申告の課税所得額が極端に低い数字となっている人もいるため、その場合には、実際の生活状況も考慮して、確定申告の金額を超える金額が認定されることも多いです。

以下では、いくつかの具体例について、算定表での婚姻費用を算出します。

別居中の生活費【子供なし】

・夫の年収が500万円で妻が専業主婦(年収0円)の場合
 ⇒6~8万円

・夫の年収が1000万円で妻が専業主婦の場合
 ⇒14〜16万円

・夫の年収が1000万円で妻の年収が500万円の場合
 ⇒6~8万円

具体例からわかるとおり、義務者の年収が高くなると婚姻費用の額も高くなりますが、権利者にも収入があると、それが考慮されて婚姻費用の額は低くなります。

別居中の生活費【子供1人】

・夫の年収が1000万円で妻が専業主婦、子どもの年齢が6歳の場合
 ⇒16~18万円

・夫の年収が1000万円で妻の年収が500万円、子どもの年齢が6歳の場合
 ⇒10~12万円

・夫の年収が1000万円で妻の年収が500万円、子どもの年齢が18歳の場合
 ⇒14~16万円

子どもがいると、子どもがいない場合と比べて婚姻費用の金額は高くなります。また、子どもの年齢が15歳以上になると、14歳以下の子どもがいる場合に比べて婚姻費用の金額は高くなります。

別居中の生活費【子供2人】

・夫の年収が1000万円で妻が専業主婦、子どもの年齢が6歳と10歳の場合
 ⇒18~20万円

・夫の年収が1000万円で妻の年収が500万円、子どもの年齢が6歳と10歳の場合
 ⇒14~16万円

・夫の年収が1000万円で妻の年収が500万円、子どもの年齢が10歳と16歳の場合
 ⇒16~18万円

子どもの人数が増えると婚姻費用の金額は高くなります。子どもの年齢によって婚姻費用の金額が高くなるのも子どもが1人の場合と同様です。

別居中の生活費【子供3人】

・夫の年収が1000万円で妻が専業主婦、子どもの年齢が6歳と10歳と12歳の場合
 ⇒20~22万円

・夫の年収が1000万円で妻の年収が500万円、子どもの年齢が6歳と10歳と12歳の場合
 ⇒16~18万円

・夫の年収が1000万円で妻の年収が500万円、子どもの年齢が6歳と10歳と16歳の場合
 ⇒18~20万円

子どもが2人から3人に増えても、婚姻費用の金額は高くなります。

専業主婦で別居した場合の生活費

専業主婦で別居した場合には、妻の方には収入がないため、妻は夫に対して生活費を請求できます。妻の側で子どもが暮らしている場合には、その分だけ請求できる生活費の額も高くなります。

なお、生活費を請求できるのは婚姻中だけです。離婚が成立すると、その時点から生活費は請求できなくなりますので、離婚成立までには生活の基盤を作っておく必要があります。

離婚の際に、慰謝料や財産分与とは別に今後の生活費を請求する人もいますが、調停などでは請求が認められることはありません。

共働きで別居した場合の生活費

共働きで別居した場合でも、収入に差があれば、収入の高い方が低い方に対して生活費を支払う必要があります。

また、収入が同程度であっても、妻の側で子どもが暮らしている場合には、その分だけ生活費が必要となるため、夫は妻に対して生活費を支払わなくてはなりません。

別居中の生活費は実家暮らしだとどうなる?

別居中に妻が実家で暮らしている場合でも、夫には妻に生活費を支払う義務があります。生活費は衣食住に必要なものであるため、住居があったとしても、生活費が必要であることに変わりはありません。

さらに、妻が実家で暮らしている場合には、夫は妻の住居費を負担しているわけではないため、婚姻費用の額から住居費相当が差し引かれることもありません。

つまり、夫婦の話し合いで婚姻費用が決まらない場合には、算定表の金額をそのまま基準として金額を決めることになります。

家賃は生活費に含まれる?

別居中に、婚姻費用を支払う義務のある夫が妻の家賃を支払っている場合には、婚姻費用から家賃に相当する額が差し引かれます。生活費は、衣食住に必要な費用であって、家賃も当然に生活費に含まれるからです。

ただし、家賃の金額が高く、婚姻費用から家賃の額をそのまま差し引くと残額が低くなってしまう場合には、金額を調整し、一定の生活水準を維持できる程度の婚姻費用を支払うことになるのが通常です。

別居中の生活費の請求方法4個

別居中の生活費についてのルールを説明してきましたが、実際に生活費を請求するにはどのような方法があるでしょうか。ここでは、別居中の生活費を請求する方法を4つ紹介します。

1. 話し合いで決まった金額を請求する

夫婦の話し合いで生活費の額が決まるのであれば、特別な手続きは必要なく、毎月決まった金額を受け取れば問題はありません。

ただし、後になって金額でもめることがないように、合意書や覚書などを作成しておくべきです。

2. 弁護士に交渉を依頼する

夫婦の話し合いで金額を決められない場合には、弁護士に交渉を依頼することも可能です。当事者同士では決まらない話も弁護士が間に入ることで解決することは珍しくありません。

弁護士の交渉によって金額が決まった場合には、公正証書を作成することが多いです。婚姻費用の支払について公正証書を作成しておくと、相手が支払わなくなったときに強制執行をすることもできるため安心です。

3. 婚姻費用分担調停を申し立てる

婚姻費用は調停の場で決めることもできます。調停では、公平な立場の調停委員が双方の意見を聴き、妥当な婚姻費用の額を調整します。

4. 審判

調停でも決まらない場合には、裁判官による審判で婚姻費用を決定します。審判は、話し合いではなく、裁判官の判断により決まるため、双方の合意がなくても強制的に婚姻費用の額を決めることが可能です。

生活費の支払い金額の減額が認められる場合

婚姻費用の額は、算定表などを基準に決定されますが、婚姻費用を請求する側に別居の理由がある場合には金額の減額が認められることが多いです。

たとえば、婚姻費用を請求する側の妻が不倫をして出て行ってしまったり、理由もないのに一方的に同居を拒んだりした場合には、婚姻費用の減額がされるか、請求が認められないこともあります。

まとめ

婚姻費用を決めるには、まずは相場を知ることが重要です。算定表で相場を確認したうえで、話し合いを行えば夫婦間の話し合いで金額を決められる可能性も高くなるでしょう。

夫婦の話し合いで決まらない場合には、弁護士に依頼する、調停を申し立てるなどの方法もあります。婚姻費用は別居中の生活を支える重要なものなので、諦めることなく、しっかりと金額を決めることが重要です。

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