別居中に離婚話が進まない時の対処法5個

別居中に離婚話が進まない時の対処法5個

※弁護士が執筆した記事です。

離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類あります。このうち約9割は協議離婚です。

協議離婚は夫婦の合意に基づいて離婚届を提出することにより成立するものなので、夫婦の一方が離婚に応じてくれなければ協議離婚はできません。

では、離婚話が進まず協議離婚できないとき、どうすればよいのでしょうか。今回は、離婚話の進まない原因やその場合の対処方法について解説します。

目次

離婚話が進まない原因4個


離婚話の進まないケースとしては以下の4つが挙げられます。

1. 相手が復縁を望んでいる

1つは相手方が夫婦関係を解消することに納得してくれない、復縁を望んでいるような場合です。

2. 相手との連絡が全くとれなくなってしまった

夫や妻が突然家を出て行ってしまい、音信不通になってしまうと、そもそも話し合うこと自体できなくなるため離婚話は進みません。

3. 親権で揉めているため離婚できない

夫婦の間に未成年のお子さんがいる場合には、離婚後に子を養育する者を決めなければなりません。協議離婚するには親権者を決める必要があるため、親権の争いが解決しないと離婚話は進まないことになります。

4. 離婚に伴うお金の問題が解決しない

離婚になるとお金の問題が発生します。具体的には、夫婦で協力して築き上げた財産について清算するための財産分与、離婚の原因を作った人に対する慰謝料、離婚後の子の養育のために必要となる養育費などです。

このような離婚に伴うお金の支払に関する夫婦間での取り決めは親権の問題とは異なり協議離婚するに当たって必須事項ではありません。

ただ、離婚した後に改めて離婚に伴うお金の話し合いをするよりも離婚と同時にお金の問題を解決しておきたいと思うのが自然ですし、実際、離婚に伴うお金の支払について話がまとまらないために協議離婚できないケースは少なくありません。

離婚は一方的に進められる?

婚姻は夫婦になろうとするカップルの合意によってのみ成立します。他方、離婚も夫婦間の合意により可能ですが、婚姻とは違い、夫婦の一方が応じてくれない場合でも離婚はできます

具体的には、離婚裁判を起こして、裁判所に離婚を認めてもらう方法です。

離婚裁判を起こすには、原則として、その前に離婚の調停を申し立てなければなりません。離婚の調停は、裁判所において調停員を交え離婚について話し合うものです。

なお、裁判離婚を起こした場合でも、必ず離婚が認められるわけではなく、法律の定める離婚事由が存在しなければ離婚は認められません。

具体的には、不貞行為などの婚姻を継続し難い重大な事情があると認められて、はじめて相手が応じなくとも、裁判所により離婚が認めてもらえるのです。

離婚話が進まないときの対処法5個


以上のことを踏まえて、離婚話が進まないときの対処法について説明しましょう。

1. 復縁を諦めてもらうため相手を何とか説得する

相手が夫婦関係の解消を望まない、復縁を望んでいる場合には、復縁を諦めてもらうよう相手を説得する必要があります。

離婚したい理由は簡潔に伝え、復縁するつもりのないことを明確に伝えましょう。

離婚の理由は千差万別ですし、相手にもそれなりの言い分があることも少なくないので、夫婦関係を続けていく気持ちがあるのか、ないのかを強調して伝えるのがポイントです。

2. 弁護士に依頼して交渉してもらう

離婚話を当事者間で進めるのはストレスになりがちです。そこで弁護士に依頼して、自分の代わりとして相手と離婚話を進めてもらえるようにするのも1つの方法です。

これにより相手と話し合うことの精神的負担を軽減することができますし、相手も弁護士という第三者の介入により感情的にならず冷静に離婚問題について考えることができる可能性が高くなります。

3. 離婚条件について譲歩することもときには大切

離婚条件について折り合いのつかないようなときは譲歩することも必要です。

相手の希望をすべて飲む必要はありませんが、ご自身の中で、譲れる部分と譲れない部分を決め、話を前に進めるために譲れるところは譲るという姿勢を示しましょう。

たとえば、相手からもらう慰謝料の額を下げたり、慰謝料の支払はしなくてもよい代わりに親権はこちらに譲ってもらうことなどが考えられます。

4. 離婚の調停を申し立てる

夫婦間の話し合いによっては離婚問題が解決しない場合は、裁判所に話を持っていくほかありません。

この場合、まずは離婚の調停を申し立てることが原則になっています。当事者同士ではうまくいかなかった話し合いも場所を裁判所に移し、調停員を交えて話し合うことによって、相手もそれまでの考えを改めるなどして離婚問題が解決することは少なくありません。

5. 離婚の裁判を起こす

調停でも離婚について合意できないときには、最終手段として裁判離婚を起こすことになります。離婚裁判では離婚事由が存在するか審理され、離婚事由が存在すると判断されれば相手の同意なく離婚できます。

なお、有責配偶者といって、不貞など離婚事由を作った責任のある者は離婚裁判を起こしても認めてもらえないことがあります。

別居が離婚で不利になるケース

離婚したいと考えるようになれば当然もう一緒に生活することもやめたいと思うのは自然なことです。ただ、婚姻中の別居に関しては、以下に説明するとおり、離婚問題において不利に働くこともあるため注意しましょう。

1. 相手と話し合うことなく無断で別居する

無断別居すなわち相手と話し合うことなく突然家を出ていくのは避けたほうがよいです。

なぜなら、夫婦には同居義務があり(民法752条)、正当な理由のない無断別居は同居義務違反となるからです。

同居義務違反を理由に有責配偶者として後の離婚の請求が認められなかったり、離婚慰謝料を請求される可能性もあります。

ただし、相手がご自身や子どもさんに暴力を振るうなどの事情がある場合に身の安全のために別居することは正当な理由があると判断されるので、無断別居でも同居義務違反にはなりません。

2. 別居して異性の家に住む

すぐに別居先を確保できないとき、一時的であったとしても、異性の家に住むのはやめておいたほうがよいでしょう。

なぜなら、別居しても直ちに婚姻関係が破綻したと判断されない場合もあり、婚姻関係が破綻していない以上は不貞による慰謝料を請求されうるからです。

たとえ不貞がなくとも異性の家に住むことにより後に不貞を疑われて問題が拡大してしまうおそれがあります。

3. 別居で証拠をつかむことが難しくなる

最後に、別居すると証拠の収集が難しくなります。

後の離婚問題の話し合いの中では争いのある事実関係については証拠に基づいて判断されることもありますから、そのような場合に備えて別居する前にできる限り証拠の収集を終えておくことが理想的です。

別居から離婚するまでの期間

離婚事由の存在しない場合

離婚事由の存在しない場合には離婚するのに数年を要することもあります。別居の時点で不貞などの離婚事由が存在しないときは、相手が離婚に応じない限り、すぐ離婚できません。

別居期間が長期に及べば、そのこと自体が離婚事由となり、最終的には離婚できますが、離婚事由になる別居期間は3年が目安と言われています。

離婚事由の存在する場合

離婚事由の存在する場合には比較的短期間のうちに離婚することが可能です。

他方、離婚事由が存在する場合には、相手が離婚に応じてくれない場合でも、離婚調停を申し立て、最終的に裁判離婚を起こすことにより離婚を認めてもらうことができます。

とはいえ、別居して、すぐに調停の申立をしたとしても、裁判所の手続きはある程度の時間を要するため、最終的に離婚できるまでに1年掛かることも覚悟しておく必要があります。

別居後に離婚に向けてやったほうがいいこと7個

1. 婚姻費用の請求

まずは、別居後の生活費を確保するため婚姻費用を請求しましょう。もし婚姻費用の額について夫婦間で折り合わないときには婚姻費用分担調停を申し立てましょう。

2. 住民票の異動

次に、住民票を異動させましょう。別居後、住民票をそのままにしておくと、別居の事実がなかったものとして扱われるおそれもありますし、将来、再び同居することを考えていたものと評価されるおそれもあります。

3. 子の養育環境を整える

未成年の子を連れて別居する際は、別居先での子の養育環境を整えましょう。子の養育環境がしっかりしていれば、親権者を得るのに有利に働くからです。

4. 離婚に向けての証拠の収集と整理

別居後の生活基盤を整えつつ、離婚に向けての証拠集めに努めましょう。具体的には、財産分与に関して相手名義の財産についての証拠や慰謝料請求の根拠になる証拠を整理したりすることが挙げられます。

ただ、先ほど説明したように別居してしまうとなかなか証拠の収集が簡単にはできないため、できれば別居前に証拠の収集をした上、別居後にそれを整理するのが理想でしょう。

5. 離婚後の生活に関する情報を収集する

離婚すると婚姻前の姓に名義変更する必要があるなどの対応が必要になります。離婚後にしなければならないことを別居中にある程度把握しておけば後に落ち着いて対応できます。

6. できれば早めに相手と離婚に向けた話し合いをする

別居して長い期間相手と連絡をとらなくなると離婚に向けた話し合いをする気持ちがお互いに萎えてしまったり、約束していたことも気持ちが変わってしまうこともありえます。別居したら、それほど期間を置かず離婚に向けた話し合いを始めるのがよいでしょう。

7. できれば弁護士に相談する

離婚と一口に言っても、相手と話し合わなければならないことは多く、法律が絡む問題でもあります。

ですから、離婚に向けた話し合いを始める前、あるいは話し合いの途中でもいいので、一度最寄りの弁護士に相談することをおすすめします。必要に応じて弁護士に依頼してしまうことにより自身の負担を軽くすることもできるでしょう。

まとめ

離婚話の進まない原因には、そもそも相手が夫婦関係の解消に同意しない、離婚条件が折り合わないといったものがあります。相手が離婚に応じなくとも、離婚事由があれば最終的に裁判を起こして離婚できます。

離婚を決意しても実際に離婚できるまでには時間の掛かることが多く、離婚前に別居することもあるでしょうが別居についても注意すべき点がいくつかあります。離婚問題に悩んだときは一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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