離婚と同時に住所を変える人は少なくないと思いますが、「離婚届」の提出と併せて住所変更の手続きを行えば、何度も役所に足を運ぶ必要もなく無駄がありません。このように、「離婚届」と同時にできる手続きは意外と多くあります。
ここでは、そのような離婚届と同時にできる手続きについて、詳しく説明します。
離婚届と同時にできる手続き8個
市区町村役場に「離婚届」を提出する際に、同時にできる手続きは次のとおりです。
1. 親権者の手続き
夫婦に未成年の子ども(18歳未満)がいる場合には、その子どもの親権者を決定しなければ、「離婚届」を受理してくれません。
離婚時に夫婦で話し合いを行って、親権者を決めることが一般的です。それでも決まらなければ、家庭裁判所での調停、審判、裁判というように、手続きが進んで行きます。
話し合いで親権者が決まった場合には、「離婚届」の「未成年者の氏名」欄に、夫、妻のどちらが親権者になったかを記入します。
家庭裁判所での調停、審判、裁判によって親権者が決まった場合には、裁判所で発行される証明書を添付します。
2. 新たに戸籍を作る手続き
例えば妻が結婚して、夫の戸籍に入った場合、「離婚届」を提出すると、結婚前の戸籍に戻ることになっています。妻が結婚前に父親の戸籍にいた人は、また父親の戸籍に戻ります。
しかし、元の戸籍に戻らずに、新しい戸籍を作ることも可能です。そのためには、「新戸籍編成の申し出」という手続きを取ります。
手続きとは言っても、「離婚届」の「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄にある「新しい戸籍をつくる」のチェック欄にチェック(✅)をするだけでできます。
3. 婚氏続称の届出
結婚によって名字が変わった人は、「離婚届」を出せば、自動的に元の名字に戻ります。例えば、妻の旧姓が「山田」で、結婚によって「田中」に変わった場合、離婚によって元の名字である「山田」に戻ります。
しかし、仕事に支障がある等の理由で、離婚後も「田中」という名字のままでいたい場合には、「離婚の際に称していた氏を称する届」を本籍地がある市区町村役場に提出しなければなりません。なお、本籍地以外の市区町村役場に提出する場合には、離婚後の戸籍謄本を添付する必要があります。
但し、この手続きは、離婚後3ヶ月以内が期限です。もしこの期限を経過した場合には、既に旧姓に戻っていることになりますので、改めて家庭裁判所に審判を申し立てて、名字を換えるための許可が必要です。
4. 世帯主変更届
夫が世帯主の家庭で、離婚して妻は現住所のまま、夫が現在の住居から引っ越す場合には、世帯主が妻に変わることになります。このような場合には、「世帯主変更届」を提出しなければなりません。
手続きには、本人確認書類(免許証など)と印鑑が必要です。但し、世帯が元妻一人になる場合には、この手続きをする必要はありません。
5. 住民票の異動届
離婚して住所が変わる場合で、同じ市区町村内に引っ越す時には、「異動届」を提出しなければなりません。この手続きには、本人確認書類(免許証など)や印鑑が必要です。
6. 転居届
離婚して住所が変わる場合で、他の市区町村に引っ越す時には、まず今まで住んでいた市区町村役場に「転居届」を提出し、「転出証明書」を受け取ります。
そして、転出証明書、本人確認書類(免許証など)、印鑑を持って、引っ越し先の市区町村役場に転居後14日以内に、「転入届」を提出します。
7. 印鑑登録の手続き
市区町村役場で印鑑登録をしている場合で、離婚によって名字が変わる時には、「印鑑登録の変更」が必要です。
但し、名字が変わる人が、他の市区町に引っ越す場合には、現在の印鑑登録は自動的に廃止されますので、引っ越し先の市区町村役場で新たに印鑑登録を行えばいいことになります。
8. マイナンバーカードの手続き
マイナンバーカードを持っている人で、離婚で名字や住所が変わる場合には、市区町村役場で、「変更手続き」を行う必要があります。
他の市区町村へ転出する場合は、引っ越し先の市区町村役場に「転入届」を提出する際に、マイナンバーカードの裏面に新住所を記載してくれます。
手続きの際には、他に運転免許証等の提示、印鑑の持参が必要です。なお、マイナンバーカードは、住所が変わっても、基本的には継続して使用することができます。
離婚後すぐにできる役所でできる手続き7個
市区町村役場に「離婚届」の提出後、直ぐにできる手続きは次のとおりです。
1. 児童扶養手当
親権者になった人は、市区町村役場で「児童扶養手当の受給手続き」を行うことができます。
この制度は、ひとり親家庭を支援するためのものです。年収等の条件を満たせば、子どもが18歳になった最初の3月まで、支援金が支給されます。
なお、手続きには、子どもの戸籍謄本、住民票、親の預金通帳・所得証明等が必要です。
2. 医療費助成
親権者になった人は、市区町村役場で「ひとり親家庭の医療費助成制度」を行うことができます。
この制度は、ひとり親家庭の子どもにかかる医療費を補助してもらえるものです。但し、所得条件等がありますから、全ての家庭に該当するわけではありません。
手続きには、親と子どもの戸籍謄本・健康保険証、住民課税(非課税)証明書、本人確認書類(免許証など)が必要です。
3. 母子家庭の家賃補助
住む市区町村によりますが、ひとり親家庭が住んでいる住宅の家賃を一部補助する制度があります。但し、住居に一定期間住んでいることや所得条件等があります。
また、補助の他に公営住宅の入居を支援する制度もありますので、実際に市区町村役場の窓口に問い合わせてみた方が良いでしょう。
4. 就学援助
「就学援助」は、小中学校にかかる費用を助成してくれるものです。具体的には、給食費、学習支援金、新入学用品、修学旅行費等の費用が援助の対象です。ただし、収入の基準が設けられています。
所得制限等の条件や支給額などは、市区町村によって異なりますので、役所の窓口に問い合わせてみましょう。
5. 国民健康保険
例えば、妻が夫の会社の健康保険に加入していた場合、離婚によって加入資格を失います。
このような場合には、市区町村役場で離婚後14日以内に、国民健康保険の加入手続きを行わなければなりません。手続きの際には、「健康保険等資格喪失証明書」が必要ですが、これは夫が会社に資格喪失の手続きを行うと発行されます。
6. 国民年金
前述の国民健康保険と同じく、妻が夫の厚生年金に加入していた場合、離婚によって加入資格を失います。
この場合も、市区町村役場で、国民年金の変更手続きを行う必要があります。手続きの際には、本人確認書類(運転免許証など)と年金手帳が必要です。
年金事務所でも同じ手続きができますが、市区町村役場の方が他の手続きと同時で行えますので、簡単で便利です。
7. JR定期券の割引
ひとり親家庭で児童扶養手当を受給しているような場合、JRの通勤定期が3割引で購入できる制度があります。
市区町村役場の窓口で申請を行い、「特定者資格証明書」を受け取って、JRの窓口で通勤定期を購入します。また、市区町村によっては、JR以外の交通機関の料金が割引になる制度がありますので、直接窓口で確認しましょう。
離婚届と転出届はどちらが先?
離婚によって他の市区町村に引っ越す場合、「離婚届」と「転出届」を提出しなければなりません。この場合、どちらを先に提出すべきでしょうか。
もし夫と妻が同じ住所で、妻が離婚によって別の市区町村に引っ越す場合には、まず「離婚届」を現住所の市区町村役場に提出します。その後、同じ市区町村役場で「転出届」を提出します。
そして、発行された「転出証明書」、本人確認書類(免許証など)、印鑑を持って、引っ越し先の市区町村役場に「転入届」を提出します。
なお、この「転入届」は、転居して14日以内に手続きしなければなりません。もしこの期限を守らなければ、5万円以下の過料を科せられる場合があります。
従って、離婚前に妻が夫と別居をしていて、他の市区町村に引っ越している場合、その引っ越しの日から14日以上経って離婚届を提出するのであれば、先に転出届を提出しなければなりません。
離婚届を提出するときの注意点3個
「離婚届」を提出する前に注意すべきことは次の3つです。
1. 養育費の決定
ひとつ目は、養育費の決定です。基本的に親権を持たない親が、親権者となった親に養育費を支払います。親権者の決定と同様、基本的に夫婦間での話し合いで、金額、支払い期間を決めます。
話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所での調停、審判、裁判での判決で決めることになります。もちろん、離婚した後に養育費の金額・期間を決めても良いですが、紛糾した場合、養育費が受け取れない状態が続くことになりますので、できれば離婚前に決めておきましょう。
2. 慰謝料や財産分与
次は、慰謝料や財産分与などです。離婚届とは直接関係ありませんが、できれば「離婚届」を提出する前に、金額や支払い方法等を決めておく方が良いでしょう。
ただ、親権と同じく、慰謝料や財産分与は当事者同士の話し合いでは、なかなか決まらないケースが少なくありません。そのような場合は、多少費用はかかりますが、弁護士に間に入ってもらい、決めていくようにした方が良いでしょう。
3. 子どもとの面会
親権を持たない親は、基本的に子どもと離れて暮らすことになります。そこで、子どもとの面会について頻度(1年に何回)、時間、場所等を夫婦間で決めておかなければなりません。
以上の点については、口約束ではなく、できれば「離婚協議書」を作成して記載した方が良いでしょう。そうでないと、後で揉める原因にもなります。
まとめ
「離婚届」は市区町村役場の窓口に提出することになりますから、どうしても平日ということになります。
一般的な会社員の場合、わざわざ休みを取って行くことになりますので、できれば他の手続きも同時に行えば無駄がありません。ぜひこの記事を参考にして、効率の良い手続きを行ってください。
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