現在 日本の年間離婚件数は、約19万3千組です(令和2年:2020年、厚生労働省統計)。平成14年(2002年)の約28万9千組をピークに減少してはいますが、毎年20万組前後の夫婦が離婚しています。
このように、離婚する夫婦は決して珍しくない現代ですが、離婚にいくつか種類があることは、意外と知られていません。
ここでは、主な4つの種類の離婚の割合、特徴、手続きの流れを説明します。
離婚の種類4つと割合
離婚には、大きく分けて4つの種類があります。
◯協議離婚
協議離婚とは、当事者が話し合って離婚に合意するものです。
◯調停離婚
調停離婚とは、家庭裁判所で話し合い、離婚に合意するものです。
◯審判離婚
審判離婚とは、調停の場で合意に至らない場合、裁判所が離婚や条件に一定の判断(審判)を行うものです。
◯裁判離婚
裁判離婚とは、裁判によって離婚の可否が判断されるものです。
現在 日本での離婚は、協議離婚が全体の88.3%、残りの離婚が11.7%です(令和2年:2020年、厚生労働省統計)。残りの離婚には、調停離婚、審判離婚、裁判離婚(和解離婚、認諾離婚、判決離婚)が含まれています。なお、和解離婚、認諾離婚、判決離婚は、後で説明します。
つまり、約9割が協議離婚、約1割がその他ということです。従って、日本では、話し合いによって離婚に合意するか、調停、審判又は裁判によって離婚の可否を決めるということがわかります。
協議離婚の特徴と手続き
協議離婚とは、婚姻関係にある両当事者が、話し合いによって離婚に合意することです。
特徴
協議離婚の特徴は、両当事者が話し合いを行い、離婚をすること、子どもの親権者の決定、養育費の金額・支払い方法、財産分与・慰謝料の額や支払い方法に合意することです。
他の離婚の種類と大きく違うのは、離婚の決定に際して、第三者が介在しないことです。話し合いに第三者が立ち会うケースがあっても、最終的には両当事者の意思によって決めます。
手続きの流れ
多くの場合、先ず配偶者の一方から相手方に離婚の意思・理由を伝えます。その後、離婚の合意、子どもの親権、養育費、財産分与、慰謝料について、話し合いで決めることになります。
上記の点について全て合意すれば、「離婚協議書」を作成します。形式は特に決まっていませんが、金銭(養育費、財産分与、慰謝料)については、後々トラブルが発生しないためにも、きちんと確実に明記しておくべきです。
「離婚協議書」の最後には、両当事者の住所、氏名を明記し、押印します。できれば、氏名を自筆し、実印を押しておいた方が良いでしょう。
アドバイス
「離婚協議書」に養育費を記載する場合には、公正証書にしておいた方がいいでしょう。
養育費は、十年以上も支払われる可能性がありますから、途中で支払いが滞ることも少なくなりません。しかし、公正証書にしておけば、滞った養育費の請求が比較的簡単に出来ます。
調停離婚の特徴と手続き
調停離婚とは、協議(話し合い)が物別れに終わった場合に、家庭裁判所に調停を申し立てる方法です。調停の場では、調停委員が両当事者の言い分を聞き、話し合いを進め、最終的に両当事者が結論を出します。
特徴
調停離婚では、専門的な知識を持つ調停委員(通常男女1名ずつ)が間に立ち、両当事者から離婚に関しての意見や考えを聞き、話し合いを進めます。
なお、調停委員はあくまでも中立の立場であり、両当事者にアドバイスを行う役目でしかありません。従って、離婚を促したり、離婚をとどまらせたりすることはありません。
手続きの流れ
離婚協議が不成立に終わった後、一方の当事者から家庭裁判所に「夫婦関係調整調停の申立」を行います。なお、申し立てを行う家庭裁判所は、相手方の住所地の家庭裁判所、あるいは当事者が合意で定める家庭裁判所です。
調停の申立から約1ヶ月後に、最初の調停が開かれ、その後1ヶ月に1回程度のペースで調停の場が設けられます。数回の調停の後、両当事者が離婚すること、子どもの親権、養育費、財産分与等に合意すれば、「調停調書」が作成されます。この文書は、裁判所が作成する文書ですから、判決文と同様の効力を持ちます。
アドバイス
調停とはあくまでも当事者の話し合いの場ですから、離婚の合意に至っていない場合は、話は平行線のまま、調停は不成立に終わるという場合が、少なくありません。従って、離婚には合意しているものの、条件面で折り合っていない場合には、有効な方法です。
審判離婚の特徴と手続き
審判離婚とは、調停が不成立に終わった場合に、家庭裁判所が離婚の条件などの判断(審判)を下す方法です。
特徴
調停で両当事者が合意できないと判断された場合に、家庭裁判所は両当事者の意見や言い分を勘案して、離婚に関する審判を下します。
但し、審判は客観的に両当事者の意見のみで判断されたものですから、両当事者が満足するケースはほぼありません。審判に不服がある場合、審判の告知日から2週間以内に異議を申し立てれば、審判は効力を失います。
手続きの流れ
調停を続けても、合意点を見いだせないと判断された場合、家庭裁判所は独自の判断で、審判を下します。両当事者が審判に異議を唱えなければ、「審判離婚」が成立します。
但し、どちらか一方でも異議を唱えた場合には、審判は無効となり、次の段階へ進みます。
アドバイス
審判は調停と違い、本人の出頭は不要です。つまり、当事者が家庭裁判所に出向かなくても審判が下されます。
もし、国際結婚で相手方が海外にいる場合、離婚には合意をしているが、条件面で折り合いがつかない場合には、この審判を利用すれば、離婚を成立させることができます。
裁判離婚の特徴と手続き
裁判離婚とは、審判が無効になった場合に、一方の当事者が訴訟を起こすことです。
特徴
通常の裁判と同じように、公判が数回行われ、裁判官が最終的に判決を下します。
訴える側(原告)が離婚訴訟を提起する際には、離婚原因を明確にしなければなりません。専門知識等が必要となりますので、専門の弁護士に依頼する場合がほとんどです。
手続きの流れ
審判が無効になった後、離婚を希望する当事者は、通常弁護士に相談をします。弁護士は、まず相手方や代理人(弁護士)に原告の意向を伝えます。
しかし、この交渉でも合意できない場合には、離婚訴訟を起こすことになります。実際に裁判が始まると、判決までに数年かかる場合もあります。
そして最終的に判決が出されますが、原告又は被告がもし判決に不満があれば、控訴することもできます。但し、そうなるとさらに判決までに年数がかかることになります。
アドバイス
裁判には、年数はもちろん、費用も多くかかります。相談された弁護士も、事情を説明し、できるだけ話し合いで解決しようとします。
裁判は公開の場で行われ、お互いに相手を非難することで、疲弊する例は少なくありません。裁判離婚を考える場合には、そのような点を考慮して、慎重に事を運ぶ必要があります。
離婚の種類6種類とは?
資料によっては、「離婚は6種類ある」と説明している場合があります。これは、分類の方法による違いです。
離婚は6種類あるという場合、協議離婚、調停離婚、審判離婚の以外に、和解離婚、認諾離婚、判決離婚の3種類があるとしています。
和解離婚とは、裁判の過程で被告側が離婚の条件に応じ、和解が成立することです。
認諾離婚とは、裁判過程で被告が原告の請求を全面的に受け入れて、離婚が成立することです。
判決離婚は、離婚の原因があると認められ、判決が下されることです。
なお、和解離婚と認諾離婚は、両者とも判決まで行かないという点は同じですが、認諾離婚は、被告が原告の言い分を「全面的に」受け入れる、和解離婚は、両者が話し合って、離婚の条件などについて「合意する」という点が違います。
まとめ
離婚には、4種類あるいは6種類ありますが、現実的には、協議離婚が約9割、その他の離婚形態が約1割です。日本では、できるだけ話し合いで解決して、裁判を避けようとする傾向にあります。
子どもの親権を争うような場合は、協議によって解決することは難しくなりますが、できるだけ両者が協議を重ね、裁判離婚を避ける形で進められることが、一般的です。これは、裁判になった場合、時間と金銭の問題が大きいからです。
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