熟年離婚の準備10個!お金は?女性男性・専業主婦・共働き

熟年離婚の準備!お金は?女性男性・専業主婦・共働き

※この記事は弁護士が執筆しています。

熟年離婚でも一般的な離婚と同じように様々な離婚に伴う問題が生じ得ます。

しかし、熟年離婚は離婚する夫婦が長い間婚姻関係を続けてきたことに伴う特有の問題や注意すべきことがあります。

そこで、今回は熟年離婚する場合に知っておくべきことについて解説します。

目次

熟年離婚とは?

熟年離婚とは、結婚して長期間結婚生活を続け熟年を迎えた夫婦が離婚することをいいます。明確な定義があるわけではありませんが、一般的には結婚して20年以上経ってから離婚することです。

熟年離婚には、以下のパターンがあります。

①結婚してまもなく夫婦関係がうまくいかなくなったものの離婚後の生活や子どものことを考えて離婚に踏み切れず年月が過ぎた後に遂に離婚に踏み切るパターン(蓄積型熟年離婚)

②長年円満な夫婦生活を送っていたところ、ある日突然夫婦関係に亀裂が走り離婚に至るパターン(突発型熟年離婚)

熟年離婚の割合

厚生労働省の人口動態調査の資料によると、熟年離婚(同居期間20年以上)の割合は増加傾向で、2023年では23.5%になっています。

熟年離婚において問題となるお金4個

1. 財産分与

財産分与とは婚姻中に夫婦が協力して築き上げた財産(夫婦共有財産といいます)を離婚に伴い清算することです。

財産分与の対象になる財産としては、預金、自動車、不動産、株、保険の解約返戻金、退職金などがあります。

熟年離婚の場合、婚姻生活が長い分、財産分与の対象になる財産も多種多額になる傾向にあります。ですので、熟年離婚の場合には必ず事前に財産分与の対象財産について把握しておくようにしましょう。

なお、夫婦の協力とは無関係に一方の配偶者が取得した財産(特有財産といいます。)は財産分与の対象にはなりません。具体的には、親から相続した財産や別居後に取得した財産などは財産分与の対象にはなりません。

財産分与においては婚姻生活中のローンは考慮されますが、プラスの財産の額よりローンの残額の方が多いとき、ローンを離婚する夫婦が分担し合うという形の財産分与は実務上認められていない点に注意しましょう。

財産分与の割合は、実務上、原則各2分の1であり、これを2分の1ルールといいます。財産分与の請求は離婚後2年以内にしないといけないません。

2. 年金分割

年金分割とは?

年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録(要するに保険料納付額)を離婚に伴い分割する制度です。年金分割は、あくまでも厚生年金記録の分割であり、将来給付される厚生年金自体を分割するものではありません。

年金分割の種類

年金分割には、合意分割と3号分割の2種類あります。

合意分割とは当事者の合意または裁判手続により決定された按分割合に基づき婚姻期間中の厚生年金記録を分割するものです。

他方、3号分割とは、平成20年4月1日以降に国民年金の3号被保険者であった者の請求により婚姻期間中の相手配偶者の厚生年金記録を当然に2分の1ずつ分割する制度です。

年金分割の請求期限

年金分割は財産分与一種であり離婚から原則2年以内にしなければなりません。熟年離婚では、婚姻期間が長く分割対象になる厚生年金記録は多くなるため年金分割の請求を忘れないようにしましょう。

3. 慰謝料

離婚慰謝料とは、主として離婚の原因を作った配偶者(有責配偶者といいます。)に対して、離婚に伴う精神的苦痛を慰謝するためのお金です。

離婚慰謝料の額は個々の事案により幅がありますが、相場は100万円〜300万円と言われています。

また、離婚慰謝料の額を算定するに際しては婚姻期間の長短が考慮されます。そのため、婚姻期間の長い熟年離婚に伴う慰謝料は一般的な相場より若干高くなります。

なお、離婚慰謝料の請求は不法行為に基づく損害賠償請求なので、原則、離婚から3年を経過すると時効により消滅してしまいます。

4. 養育費

養育費とは、離婚後の未成熟子を養育するための費用です。養育費の請求は親の子に対する扶養義務の分担に基づくものです。

養育費の額は子の年齢及び人数、親双方の収入を基礎に算定され、実務では裁判所の作成・公表する算定表を参考にして決めます。

養育費は通常子が成人するまで(現在は18歳)支払うべきものですが、あくまでも子が独立するまでの費用なので、たとえば大学卒業までのように18歳を超えるケースもあります。

熟年離婚に向けて準備すべきこと10個

1. 離婚後の住む家を決めておく

離婚になれば夫婦は別々に暮らすことになるため、離婚後の住む家を決めておく必要があります。

もし、婚姻中に住んでいる家を出て賃貸物件に入居するのであれば、転居費用や初期費用、あるいは保証人の要否なども確認しましょう。

また、婚姻中に住んでいる家に住み続けたい場合、家の名義が相手方配偶者であるときには承諾が必要ですし、仮に承諾してもらえる場合でも家賃の支払の要否について話し合う必要があります。

2. 離婚後に必要となるお金について確認する

婚姻中は相手方配偶者の収入を自身の生活のために費やすことができたとしても、離婚後はそういうわけにはいきません。そこで、離婚した場合に必要となる毎月の生活費がどの程度になるのか確認しましょう。

また、熟年離婚の場合には離婚後に長く働くことができないこともあるでしょうから、老後にかかるお金についても同様に知っておく必要があるでしょう。

3. 離婚後の仕事に目処をつける

離婚後の生活費は、自分自身の仕事による収入から捻出することが基本となります。しかし、専業主婦(主夫)の方の場合には、婚姻中に仕事をしていないため、特に熟年での離婚となれば、離婚後の仕事探しに苦労することが予想されます。

また、婚姻中に仕事をしている方でも、離婚後の生活費を賄えるくらいの収入を得られていないのであれば、転職やダブルワークも視野に入れる必要があるでしょう。

4. 離婚後の子どもの養育について考える

熟年離婚の場合には既に子も大きくなり独立していることもあり親権の問題は起きないかもしれませんが、未成熟の子がいれば当然親権や養育費のことが問題になります。

離婚後の生活費を確保する問題とも関係しますが、もし離婚後に子を養育したいのであれば、そのための養育費を相手からもらうよう話し合う必要があります

また、離婚前に子を連れて別居するのであれば、実際にどの程度のお金が必要になるか分かるでしょう。

5. 離婚後にもらえる公的手当の有無や額についてあらかじめ把握する

離婚後に未成熟の子を養育する親に対して支給される各種の公的手当があります。具体的には、児童手当、児童扶養手当などです。

離婚後の生活のために得られる収入は自身の仕事による収入や養育費のほかにこうした各種の公的手当もありますから、その支給要件、支給額、支給してもらうための手続きについてあらかじめ確認しておきましょう。

6. 離婚に伴う財産分与について考える

熟年離婚の場合には婚姻期間が長期に渡りますから離婚に伴い清算すべき夫婦共有財産も多種多額になることもあります。財産分与の請求は離婚後の経済的安定を確保するための手段の1つでもあります。

ですから、特に婚姻中専業主婦(主夫)であった方については財産分与の対象になる財産とその額についてあらかじめ確認しておき、適宜証拠になる書面も収集しておくようにしましょう

7. 離婚に伴う慰謝料について考える

離婚慰謝料もお金ですから離婚後の生活のために、もらうべきものをしっかりもらうべきです。

たとえば、相手配偶者の不貞行為により離婚に至った場合には、原則として離婚慰謝料を請求することができますから、不貞行為の証拠を収集したり、必要に応じて弁護士に慰謝料請求の依頼をすることも視野に入れましょう。

なお、不貞行為に基づく慰謝料を請求する場合には、その相手方は配偶者のほか不貞の相手にも請求できますから、その点も忘れないようにしましょう。

⇒浮気調査をするときには安心して依頼できる大手探偵事務所一覧を参考にしてください。

8. 離婚後の生活の変化に備える

離婚すると当然独身となり1人での生活がはじまります。特に熟年離婚の場合には離婚後に再婚することもなく、将来的には1人で老後生活を送ることもあるでしょう。

ですから、熟年離婚の場合には特に離婚後の生活の変化についてよく考える必要があります

離婚後の生活費の問題にとどまらず、健康上の問題から遠方に移動することが困難になっても大丈夫か、1人での生活が苦にならないような精神状態を維持できるかなど、離婚に伴う変化に備えた心の準備も必要でしょう。

9. 離婚や離婚に伴う問題を解決する手段や手順について確認する

離婚について相手方と合意できないとき、離婚に伴う財産分与、慰謝料、養育費などについて争いのあるような場合(争いになりそうな場合)には、どのような方法によりそうした問題を解決することができるのかあらかじめ知っておいたほうがいいでしょう。

具体的には、弁護士に依頼して交渉してもらう、調停を申し立て裁判所において話し合いを続ける、話し合いで解決しないときには裁判官に審判や判決を言い渡してもらって解決するなどです。

10. 弁護士に相談する

熟年離婚に限った話ではありませんが、離婚問題がスムーズに解決しないことは多く、実際には相手方の言い分に折れて半ば泣き寝入りの形で問題を解決してしまう方もいるかもしれません。

しかし、当事者の話し合いでは問題が解決しないときには、法律に従い公正な解決を求めることができるのであるから、簡単に折れてしまうのではなく、少なくとも困ったら一度は弁護士に相談してみるようにしましょう

熟年離婚後の住む場所

熟年離婚後の住む場所については以下の2パターンについて分けて説明します。

①離婚後も婚姻中に住んでいた家に住み続ける
②離婚後に婚姻中に住んでいた家とは別の家に住む

婚姻中の家に住み続ける場合

離婚後も婚姻中の家に住み続けることができるのであれば別の住む家を探したり、引っ越したりする必要がないため、負担は軽くなります。

婚姻中の住居が自分の実家である場合、自分名義の持ち家である場合、自分が借主の賃貸物件である場合には、婚姻中と何ら変わりはないでしょう。

他方、離婚後に住む家が相手配偶者の名義であったり、相手が借主の賃貸物件であるような場合には、まずは相手の承諾が必要ですし、住宅ローンや家賃の負担の問題について話し合う必要があるでしょう。

婚姻中の家とは別の家に住む場合

次に、婚姻中の家とは別の家に住む場合には、当然、別の家を探さなければなりませんし、引っ越しもしないといけないため、それだけでも負担です。

これに加え、賃貸物件に住むのであれば初期費用や家賃の負担について目処を立てる必要があります。また保証人がいないと入居できないこともあるので、その場合には事前に保証人になってもらえる人を確保する必要もあります。

専業主婦女性が熟年離婚する場合の注意点

専業主婦の女性は婚姻中仕事をすることなく家事労働に専念しています。そのため離婚後の収入の確保が問題となります

熟年離婚の場合には仕事のキャリアもないため、年齢の問題もあり離婚後に十分な収入の見込める就職先を見つけることに苦労するかもしれません。

ですから、専業主婦の女性が熟年離婚する場合には、財産分与や慰謝料の請求により離婚後の生活のためのお金を確保することが重要になります。

共働きの夫婦が熟年離婚する場合の注意点

次に、共働きの夫婦が熟年離婚する場合には財産分与に関して注意が必要です。

財産分与の割合が2分の1から修正されることがある

通常、財産分与の割合は各2分の1です。しかし、夫婦が共に仕事をしており家事労働もそれぞれ同程度にこなしているようなときには、収入の格差を理由に財産分与の割合が修正されることがあります。

そもそも財産分与は専業主婦の離婚後の扶養の意味でもあったところ、夫婦がそれぞれ十分な収入を得ているようなときには離婚後の扶養の問題は起きないため、それぞれの稼得能力に応じて財産分与の割合を決めるのが公平に資するからです。

夫婦共働きでも年金分割は認められる

夫婦共働きの場合には共に厚生年金の保険料を納付しており年金分割はできないと勘違いするかもしれません。

しかし、実際には夫婦の納付した厚生年金保険料について多い方の分を少ない方に分割することができます。

熟年離婚する場合に男性が注意すべきこと

ここでは妻が専業主婦だった男性が熟年離婚する場合の注意点について解説します。

まず、男性は年金分割により将来支給される年金が減少してしまう可能性があることに注意しましょう。

次に、妻が専業主婦の場合には婚姻生活のために組むローンの名義は男性であることが多いと思いますが、現在の実務では一般的にローンを財産分与により分担することは想定されていません。

そのため結婚生活のために組んだローンを離婚後も1人で返済していかなけばなりません

熟年離婚するなら貯金はいくら必要?


熟年離婚に特有の問題として老後生活に対する不安というものがあります。熟年離婚の場合には既にある程度年齢を重ねた後の離婚になるため定年退職が迫っていたり、健康上の理由などから長くは仕事ができないこともあるでしょう。

熟年離婚を考えているのであれば老後生活に備えて貯蓄しましょう

老後生活のために必要となる貯金の額を一律に示すことはできませんが、65歳以上の単身世帯の平均の生活費が約13万と言われており、仮に85歳まで生きるとすれば13万円×12ヶ月×20年=3120万円の費用が必要になります。

ですから、その金額から受給する年金の総額を控除した額の貯金があれば十分といえます。

熟年離婚により生活できなくなることを防ぐ方法

熟年離婚により生活できなくなることを防ぐにはとにかく生活費を確保することです。

まずは婚姻中の貯金です。また、離婚に伴い相手方に請求することのできる財産分与、慰謝料、養育費などの金銭もまた離婚後の生活のために使うことができます。

次に、自身の収入としての仕事による収入、公的手当などが考えられます。

こうした離婚後に自身の使うことのできるお金についてあらかじめ計算した上で離婚に踏み切るのが肝心です。

もちろん、事情により離婚後の生活に不安を抱えた状態のまま離婚に踏み切ることもあるでしょう。そのときには親や親類などに援助を頼むこともありえるでしょう。

最後にどうしても自力では生活できないときには、居住する地方自治体に生活保護の申請について相談するようにしましょう。

まとめ

熟年離婚の場合、婚姻期間が長く、離婚時の年齢が高いです。そのため熟年離婚は他の離婚とは異なる特有の注意点があります。

肝心なことは離婚後もしっかりと生活基盤を確保することです。そのために財産分与、慰謝料、養育費の請求はしっかりとし、また、離婚後の居住先や就業についても考える必要があります。

もし熟年離婚を考えていて少しでも不安ごとや困り事があれば一度弁護士に相談することをおすすめします。

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