※この記事は弁護士が執筆しています。
離婚調停中に気になる異性ができたとき、その人に連絡をしたり、会って食事をしたり、性交渉を持ったりしてよいのでしょうか。
今回は離婚調停中の異性との交際について解説します。
離婚調停とは?
離婚調停とは、離婚について当事者間の話し合いでは解決できない、そもそも話し合いのできない場合に家庭裁判所において離婚について話し合いを行う手続きです。
離婚調停は相手方の現住所地を管轄する、あるいは当事者間において合意した家庭裁判所に対する申立により開始します。
離婚調停が始まると、裁判所が調停の期日を決めます。期日では夫婦が2名の調停員を交えて離婚すること自体や離婚条件について話し合いをします。
そして、裁判所は夫婦双方の意向や提出された資料を踏まえ調停案を作成して、最終的に合意に至れば、その内容を記載した調停調書を作成して離婚調停は終了します。
他方、もし調停での話し合いでも合意に至らなければ調停は不成立となり終了します。調停が不成立となり終了した場合には、いよいよ最終手段として裁判離婚を起こすことになります。
⇒参考:離婚の種類4つ
離婚調停中に異性と会うのはNG?
婚姻中の夫婦の一方が異性と性交渉を持つ行為(不貞行為)は、夫婦生活の平和を侵害する不法行為であり、慰謝料の支払義務が発生します。
もっとも、既に夫婦関係が破綻している場合には保護すべき夫婦関係の平和は消滅しているため、不法行為責任は否定され慰謝料の支払義務は発生しないと考えられています(最高裁平成8年3月26日判決)。
夫婦関係の破綻の有無を判断する明確な基準はありませんが、離婚自体の合意があり、別居して数ヶ月が経過していれば、もはや夫婦関係の修復の可能性はなく破綻しているものと判断されるでしょう。
単に異性と会うだけで性交渉を持たなければ慰謝料を払う必要はないとも思えますが、頻繁に配偶者以外の異性と会うことも夫婦関係の平和を侵害する可能性のある行為であり、不貞行為の場合と比較すれば低額になるとしても慰謝料の支払義務が認められる可能性はあるでしょう。
結論的には、離婚調停中に異性と会うことは、慰謝料の支払義務に関していえば、既に夫婦関係が破綻している場合にはOKですが、破綻していない場合にはNGということになります。
離婚調停中に恋愛や交際するのは悪影響?
離婚調停中に異性と恋愛や交際することは、慰謝料の支払義務の問題に関していえば、夫婦関係が破綻していればOKですが、破綻していない場合にはNGということになります。
そのため、夫婦関係が破綻していない場合、あるいは異性との恋愛や交際が破綻の原因になっている場合には、離婚調停中に恋愛や交際をすることは慰謝料の支払義務を生じさせることになります。
もっとも、夫婦関係が破綻していることの判断は諸事情を踏まえた総合的な判断になるため、既に夫婦関係は破綻しているとの自己判断に基づいて異性と交際や恋愛をした場合、後に夫婦関係は破綻していないと判断される可能性があります。
また、たとえ夫婦関係が破綻している場合でも、異性との交際や恋愛の事実が相手に知られると、離婚調停における話し合いがうまくいかなくなることもありえます。
このように考えると、夫婦関係の破綻の有無に関わらず、離婚調停中に配偶者以外の異性と恋愛や交際をすることはできれば控えるべきといえます。
離婚調停中のマッチングアプリや婚活は?
離婚が正式に成立しない段階での配偶者以外の異性との婚姻は重婚となり禁止されています。
もちろん、マッチングアプリや婚活により離婚後の再婚相手を見つけようとすること自体は禁止されてはいません。
しかし、夫婦関係が破綻していない段階において離婚後の再婚相手を見つけようとする行為は、夫婦関係の平和を侵害する不法行為として、慰謝料支払義務の発生する可能性があるため、控えるべきです。
離婚調停中に異性と食事・遊びに行くのは?
単に1度だけ異性と食事や遊びに行っただけでは通常、慰謝料の支払義務は発生しません。
しかし、その相手と頻繁に食事をしたり、遊びに行ったりする行為は夫婦関係の平和を侵害する不法行為となり、慰謝料の支払義務が認められる可能性があります。
つまり、夫婦関係が破綻していなければ、離婚調停中に異性と食事・遊びに行くことは慰謝料の支払義務を発生させる可能性があるのです。
離婚調停中に異性と連絡やLINEをするのは?
配偶者以外の異性と電話で会話をしたり、LINEなどのSNSを通じてメールのやりとりをしたりすること自体では基本的に慰謝料の支払義務は生じません。
但し、その内容が恋愛や交際を前提としたものであれば、当然夫婦関係の平和を侵害するものとなり、慰謝料の支払義務が認められることもありえます。
具体的には、単に夫婦関係がうまくいっていないことについて異性に相談するだけの連絡であれば問題はないでしょうが、そこから更に関係を深めて恋愛や交際に発展させることは控えるほうがいいでしょう。
離婚調停中に好きな人ができたら我慢?
結局のところ、離婚調停中に好きな人ができたとしても、恋愛や交際の関係に発展させることは、夫婦関係の破綻の有無に関わらず、慰謝料の問題の発生や調停に悪影響を与える可能性があるため、我慢するのが無難です。
特にその異性と性交渉を持つことは不貞行為となり多額の慰謝料を払わなければいけなくなるリスクがあるため控えるべきでしょう。
離婚調停中の過ごし方と心構え
離婚調停中は配偶者以外の異性との交際や恋愛より、離婚問題を早期に解決することを最優先に考えて生活すべきです。
相手方配偶者に対して不必要に直接連絡することは控え、離婚に関する自身の考えは調停の期日において調停員を通じて相手方配偶者に伝えるようにしましょう。
そして調停の期日に備えて、あらかじめ必要になる資料を収集しておきましょう。
離婚調停中は未だ婚姻関係が継続しているため、相手方に対して婚姻費用の分担として生活費の支払を求めることができます。
もし相手方が生活費を送ってくれないのであれば、離婚調停と同時に婚姻費用の分担の調停を申し立てることもできます。
離婚後の生活費や子どもの養育についてしっかりと見通しを立てておくことも離婚調停中の心構えとしては重要です。
離婚調停が上手くいくための方法5個
1. 調停員からの信頼を得る
離婚調停では2名の調停員が仲裁役になって、当事者双方の意向を聴取したり、合意に向けた説得をしてくれたり、調停の案を考えてくれたりします。
調停を有利に進めるにはこの調停員からの信頼を得ることが大事です。
調停員からの信頼を得るには、まず調停員から求められたことに対して誠実に対応することや離婚問題の解決に向けて柔軟な考え方を示したり、一定の譲歩を見せることです。
また調停員の発言に対し嫌な感情を持ったとしても感情的にならず喧嘩しないようにしましょう。
2. 調停の見通しを立てる
離婚調停では離婚自体のほか、親権・養育費・面会交流、財産分与、慰謝料などの離婚条件についても話し合います。
調停を上手に進めるためには、こうした離婚に関する問題について、あらかじめ見通しを立てることが大切になります。
あらかじめ調停における見通しを立てておけば、期日における話し合いにおいても、譲るべき部分と譲れない部分を明確にした上で対応することができます。
3. 感情的にならない
離婚調停中は相手方配偶者に対して悪い感情を持つことが少なくありません。しかし感情的になってしまうと解決できる問題も解決できなくなってしまうこともあるため注意しましょう。
離婚調停は離婚に向けた話し合いの場ですから、相手方配偶者の言動にいちいち感情的にならず、冷静に話し合いを進めましょう。
また調停員の言動に対して感情的にならないことも大切です。調停員に暴言を吐くなどしてしまえば、調停員と敵対的になってしまい、調停をうまく進めることができなくなってしまいます。
4. 安易に合意しない
離婚調停で合意したことを後になって覆すことは容易ではありません。離婚条件について理解できない部分があるときは、必ずその意味を理解できるよう調停員に確認しましょう。
また、調停員から調停を成立させるため強く説得されたりした場合でも、自分自身の納得のできないことは明確にNOと回答しましょう。
もちろん、何でも拒否すればよいというわけではなく、事前に自身の優先すべきことや譲れる部分と譲れない部分を明確にしておき、それに従い合意すべきであるのかよく考えるようにしましょう。
5. 弁護士に相談する
最後に離婚調停を上手に進めるためにあらかじめ弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、離婚調停がそもそもどのような手続きであるのか、離婚に伴う色々な問題についての見通しなどを知ることができます。
また弁護士費用の問題はありますが、本人だけで離婚調停に対応する負担を回避でき、調停の段階から弁護士を代理人とすることもできます。
まとめ
離婚調停中に配偶者以外の異性と恋愛や交際をしたり、性交渉を持ったりすることは、夫婦関係が破綻していない場合には慰謝料の支払義務の生じる可能性があります。
また夫婦関係が既に破綻しているとしても、異性との交際などの事実が相手配偶者に知られると離婚調停の話し合いに悪影響を与える可能性があります。
結論として離婚調停中の異性と交際するなどの行為は控えるのが無難であり、離婚調停中は調停を早期に成立して離婚問題を解決することを最優先に考えるようにしましょう。
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