人生のうちで「◯◯届」等を出すケースはいくつかありますが、「離婚届」を提出することは、一生に一度あるかないかの経験でしょう。
ここでは、「離婚届」の書き方について、詳しくご説明します。
離婚届を書く前に準備すること
実際に「離婚届」を書く前に、配偶者の間で決めておくべきことがあります。
離婚後の名字
まず1つ目は、離婚後の「氏(名字)」です。婚姻期間中は、二人とも同じ「氏」でしたが、婚姻したことによって「氏」が変わった人は、次の選択肢があります。
・婚姻前の「氏」を名乗り、婚姻前の戸籍に戻る。
・婚姻前の「氏」を名乗り、新しい戸籍を作る。
・婚姻期間中の「氏」を名乗り(「氏」を変えず)、新しい戸籍を作る。
親権
2つ目は、親権の問題です。未成年の子ども(満18歳未満)がいる場合、父、母のどちらが親権を持つのか、決めておかなければなりません。
また、「離婚届」の記載内容とは直接関係ありませんが、養育費、慰謝料、財産分与についても、両者で合意しておく必要があります。
離婚届のもらい方
離婚届のもらい方には次の2つの方法があります。
①役場の戸籍課や市民課などででもらう
②役場のホームページなどで用紙をダウンロードする
また、全国共通であるため、住んでいる場所以外で手に入れたものでも使用できます。
離婚届の書き方と記入例見本
項目ごとに、「離婚届」の書き方をご説明します。記入例は法務省のものです。
(1)届出の日付
市区町村役場に「離婚届」を提出する日付を記入します。郵送する場合は、郵便に出す日を書きます。
(2)氏名・生年月日
夫と妻の婚姻期間中の姓名を記入します。生年月日は、和暦(昭和、平成など)で記入します。
(3)住所
夫、妻ともに、「離婚届」の提出時に住民登録している住所を記入します。「住民登録している住所」が不明の場合には、「住民票」を取り寄せて確認してください。
(4)世帯主の氏名
夫と妻の「住民票」に「世帯主」となっている方の氏名を記入します。
(5)本籍
婚姻期間中の「本籍」を記入します。不明の場合は、「戸籍謄本」を取り寄せて確認してください。
(6)父母の氏名・続柄
夫、妻、それぞれの父・母の氏名を記入します。既に他界している場合でも、記入する必要があります。続柄は、父母から見た夫、妻の関係です。例えば、長男、長女などと記入します。
(7)離婚の種別
協議離婚、調停離婚などの種別を記入します(該当する箇所の□にチェックを入れます)。協議離婚以外で離婚する場合には、成立年月日等を記入します。
(8)婚姻前の氏にもどる者の本籍
婚姻によって「氏」が変わった夫または妻は、「もとの戸籍にもどる」のか「新しい戸籍をつくる」のかを選択します。その際に、戸籍と筆頭者も記入します。
但し、婚姻中の「氏」を変えずに、新しい戸籍を作る場合はこの欄は記入せず、他に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出しなければなりません。
(9)未成年の子の氏名
夫婦の間に未成年(満18歳未満)の子どもがいる場合には、どちらが「親権」を持つかを予め決めておき、夫または妻の欄に記入します。
(10)同居の期間
夫婦が同居を始めた年・月と同居が終わった月・日を記入します。
(11)別居する前の住所
夫婦が最後に同居していた住所を記入します。
(12)別居する前の世帯のおもな仕事
該当する箇所に「チェック」を入れてください。
(13)夫婦の職業
国勢調査の年の場合に記入します。
(14)その他
養父母がいる場合に、「夫の養母○○」などと、「続柄・氏名」を記入します
(15)届出人署名
夫と妻の本人がそれぞれ署名します。
証人
成年者(満18歳以上)の2人が、氏名(署名)、住所、本籍を記入します。また、外国人が証人になる場合には、氏名は本国名、生年月日は西暦、本籍は国名を記入します。
連絡先
必ず昼間に連絡が取れる電話番号を記入します。
離婚届の他に必要な書類
協議離婚の場合
協議離婚では、「離婚届」だけを市区町村役場に提出することになります。但し、本人確認を行う場合がありますので、念のために、「離婚届」を提出する際には、運転免許証やパスポート等を持参して行った方が良いでしょう。
<必要書類>
・離婚届
・本人確認書類(運転免許証やパスポート)
調停離婚の場合
調停離婚では、本籍地とは違う住所の市区町村役場に「離婚届」を提出する際に、「戸籍謄本」が必要です。本籍地がある市区町村役場に提出する際には、不要です。
また、離婚調停を申し立てた側の「調停調書」の謄本が必要となります。
調停離婚の場合、調停が成立して10日以内に「離婚届」を提出しなければなりません。この期日に遅れると、過料が課される場合があります。
<必要書類>
・離婚届
・戸籍謄本
・本人確認書類
・調停調書の謄本
裁判離婚の場合
裁判離婚でも、本籍地とは違う住所の市区町村役場に「離婚届」を提出する際には、「戸籍謄本」が必要です。本籍地がある市区町村役場に提出する際には、不要です。
さらに、判決確定証明書も提出することになります。なお、調停離婚と同じく、判決が確定して10日以内に「離婚届」を提出しなければなりません。この期日に遅れると、過料が課される場合があります。
<必要書類>
・離婚届
・戸籍謄本
・本人確認書類
・裁判判決書類
※裁判判決書類の詳細
審判離婚:審判書の謄本と確定証明書
和解離婚:和解調書の謄本
認諾離婚:認諾調書の謄本
判決離婚:判決書の謄本と確定証明書
離婚届の間違い部分の訂正の仕方
「離婚届」は、鉛筆やいわゆる「消せるボールペン」などは使わずに、一般的なボールペンなどを使います。
鉛筆や消せるボールペンを使うと、相手方や第三者に改ざんされるおそれがあります。また、文字は読みやすいように、楷書で丁寧に書きます。
もし後で書き間違いに気付いた場合には、できれば新たに「離婚届」を取り寄せて、書き直す方法をお勧めします。
それが難しい場合には、間違えた文字に二重線を引きます。そして、正しい文字を記入します。さらに、用紙の欄外の左側に「訂正の署名」欄があるため、そこにフルネームを書きます。
離婚届の提出方法
「離婚届」の提出先は、届け出る人が住んでいる市区町村役場の戸籍課(係)で構いません。また、市区町村役場に持参をしても、郵便で送っても構いません。
なお、実際に離婚する夫婦の両方が届け出ても、どちらか一人が届け出ても受理されます。また、夫婦が役所に行けない場合には、第三者に代わりに提出してもらっても支障ありません。
「離婚届」を受け取った戸籍課(係)の担当者は、記入漏れや不備がないかを確認し、問題なければ受理されます。受理された日が、離婚の成立日です。
なお、市区町村役場が休みの日でも夜間でも、「離婚届」は提出できます。但し、この場合は、一旦書類を預かり、開庁時間に記載内容を確認して、受理することになります。
離婚届を書く時のよくある質問5個
Q1. 離婚届は、全て自分で書くのでしょうか?
(回答)
離婚届は、必要な記載事項が全て揃っていれば、市区町村役場は受理してくれます。極端なことを言えば、誰かに代筆してもらっても良いことになります。但し、大事な書類ですから、後々紛争を避ける意味でも、夫、妻のそれぞれが自分で全て書いた方が良いと思います。
Q2. 証人は誰でも良いのですか?
(回答)
成年(満18歳以上)であれば、誰でも構いません。但し、夫または妻が、証人なりすまして記載するなどの行為は、御法度ですから、確実に証人に自筆してもらいましょう。
なお、証人欄の記入が必要なのは、協議離婚の場合だけで、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の場合は不要です。
Q3. 証人は、夫、妻側からそれぞれ一人ずつをお願いすることになるのでしょうか?
(回答)
成年であれば、夫側から一人、妻側から一人をお願いする必要はありません。離婚する夫婦の知人の夫婦にお願いしたり、夫または妻の知人二人にお願いしたり等、特に決まりはありません。
Q4. 提出する人は誰でも良いのですか?
(回答)
「離婚届の提出方法」でもご説明したとおり、誰でも構いません。しかし、夫婦関係を解消するための大事な書類ですから、できれば夫か妻のどちらかが、直接市区町村役場に持参する方が望ましいと思います。
Q5. 市区町村役場が離婚届を受理しないことはありますか?
(回答)
記載漏れがあったり、記載されている内容が不明瞭だったりした場合には、受理されない可能性があります。その際には、「離婚届」に記載した「連絡先」に確認の電話があります。もし、書き方がわからない箇所がある場合には、事前に担当部署に尋ねた方が良いでしょう。
まとめ
「離婚届」は、夫婦関係を解消する重要な書類です。但し、一生のうちで一度 書くか書かないかの書類ですから、どのように書いて良いかわからないと言うのが、一般的でしょう。
記載内容に漏れや不備があれば受理されず、修正等を行わなければなりませんので、不明な点は事前に必ず確認しましょう。
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