司法書士への無料離婚相談や、離婚に関する仕事の依頼を検討している人もいるでしょう。
司法書士ができる離婚業務の範囲や依頼するメリット、費用の目安などについて説明します。
離婚問題にかかわる司法書士の業務範囲
項目 | 対応範囲 |
離婚協議書の作成 | 合意内容を法律文書として記載し、後のトラブルを防止 |
公正証書作成サポート | 養育費・慰謝料等を強制執行可能な形で文書化 |
財産分与による不動産名義変更登記 | 所有名義の変更・共有解消に関する登記手続き |
140万円以下の請求 | 認定司法書士が対応可能。140万円以下の簡易裁判所における訴訟や調停の代理人として活動 |
司法書士が関わることができるのは「書類作成」や「登記」に関する部分が中心です。
離婚そのものの合意や慰謝料・親権などで揉めている場合は弁護士への相談が必須です。
ただし、話し合いが済んでおり、文書作成や登記手続きだけ必要な場合は費用も抑えられ、迅速な対応が期待できるため、司法書士が有力な選択肢となります。
司法書士と弁護士の違い
業務内容 | 司法書士 | 弁護士 | 補足 |
離婚協議書の作成 | ◯ (当事者の意向に基づく文案作成) |
◯ (法的助言・代理含め可能) |
司法書士は助言レベルまで。弁護士は法的交渉も可。 |
公正証書作成サポート | ◯ (文案準備や公証役場手続きの補助) |
◯ (文案作成・交渉・同席) |
双方対応可だが、弁護士は相手との交渉も代理可能。 |
財産分与に伴う不動産登記 | ◯ (専門領域) |
△ (原則他士業に依頼) |
登記は司法書士の専門。弁護士は通常外注。 |
養育費・慰謝料請求の代理交渉 | ✕ | ◯ | 司法書士は代理できず、弁護士のみ対応可能。 |
離婚調停・離婚裁判の代理 | ✕ | ◯ | 調停・訴訟代理は弁護士のみ。司法書士は不可。 |
裁判書類の作成支援 | △ (本人訴訟支援の範囲で) |
◯ | 書類作成のみは司法書士可。代理行為は不可。 |
簡易裁判所での訴訟代理 (※140万円以下) |
◯ (認定司法書士のみ) |
◯ | 認定司法書士に限り対応。離婚案件では限定的。 |
司法書士ができる離婚業務4つ
①離婚協議書の作成
離婚協議書とは、夫婦が合意した離婚条件(財産分与・養育費・親権・面会交流など)を明文化した書面です。
司法書士はこの協議書の文案作成をサポートし、法律的に有効な内容に整える役割を担います。たとえば、将来的なトラブルを防ぐために曖昧な表現を避け、明確で実効性のある文面に仕上げます。
ただし、司法書士は交渉の代理や法的助言は行えないため、あくまで当事者同士の合意を前提とした支援に限定されます。円満離婚を目指す場合に有効な手段です。
②公正証書作成サポート
養育費や慰謝料の支払いを確実に実行させるために、公正証書を作成しておくことが推奨されます。
司法書士は、公証役場での手続きを見据えて、公正証書に記載すべき内容の文案作成や、必要書類の準備をサポートします。
特に「強制執行認諾文言」を加えることで、支払いが滞った場合には裁判を経ずに財産の差し押さえが可能となり、実効性のある書面になります。司法書士の専門知識により、形式や内容に不備のない文書を準備できます。
③財産分与による不動産名義変更登記
離婚後に夫婦間で取り決めた不動産の財産分与に基づき、所有名義を変更する場合には、法務局への登記申請が必要です。
この登記業務は司法書士の専門分野であり、離婚によって発生する所有権移転や持分整理について、正確に手続きを行うことができます。
登記原因証明情報の作成や登記申請書類の作成、法務局への提出まで一貫して対応可能です。
不動産の名義が変更されないまま放置すると、後々のトラブルや売却時の支障となるため、早期の対応が重要です。
④140万円以下の請求
離婚に伴う慰謝料や未払い養育費の請求額が140万円以下である場合、認定司法書士であれば簡易裁判所での訴訟代理が可能です。
これを「簡裁訴訟代理」といい、訴状の作成だけでなく、原告代理人としての出廷や手続きの遂行まで対応できます。
ただし、140万円を超える場合や、相手との示談交渉、調停手続きは司法書士の権限外であり、弁護士に依頼する必要があります。
費用を抑えて法的措置を取りたい方には、有効な選択肢のひとつです。
司法書士ができない離婚業務4つ
①離婚に関する法律相談
司法書士は法律に関する基礎知識を持っていますが、離婚問題に関する法律相談を行うことはできません。
たとえば「養育費はいくらが妥当か?」「親権を取るにはどうしたらいいか?」といったアドバイスは、弁護士法の規定により弁護士しか行えない業務です。
司法書士が行えるのは、夫婦間で合意済みの内容を法的文書に落とし込むことまでであり、法的判断や助言を求める場合は、弁護士に相談する必要があります。
②離婚調停や離婚裁判の代理
司法書士は、家庭裁判所で行われる離婚調停や離婚裁判の代理人にはなれません。これらは訴訟行為に該当し、原則として弁護士のみが対応できる業務です。
司法書士ができるのは調停申立書や訴状の作成補助までで、調停委員とのやり取りや裁判所への同行、法廷での代理発言などはすべて禁止されています。
離婚条件に争いがある、調停を申し立てる必要があるといった場合は、必ず弁護士へ依頼する必要があります。
③相手との示談・交渉の代理
司法書士は、離婚条件について相手方と交渉したり、示談交渉を代理したりすることはできません。
たとえば、慰謝料や養育費、財産分与の金額交渉を依頼者の代わりに行うことは、弁護士法に違反する行為となります。
司法書士ができるのは、当事者同士がすでに合意した内容を法的文書にまとめることに限られます。離婚条件に争いがあり、第三者による交渉が必要な場合は、弁護士の介入が必須です。
④140万円を超える慰謝料や金銭請求の代理
司法書士の代理権は、認定司法書士であっても簡易裁判所の扱う「請求額140万円以下」の事件に限定されています。
離婚における慰謝料や財産分与などが140万円を超える場合は、司法書士が訴訟代理人になることはできません。
たとえ書類作成を依頼できても、訴訟に関しては弁護士でなければ対応できないため、請求金額の大きい案件では弁護士へ相談するとよいでしょう。
司法書士の離婚業務費用の目安
業務内容 | 費用目安 | 備考 |
離婚協議書の作成 | 50,000~100,000円 | 内容の複雑さや面談回数により変動 |
公正証書作成サポート | 30,000~60,000円 | 文案作成・公証人との調整を含む※別途公証人費用 |
不動産の名義変更登記(財産分与) | 50,000~100,000円 | ※登記費用(登録免許税)+実費は別途必要 |
慰謝料・養育費などの請求 (140万円以下) |
100,000~150,000円 | 認定司法書士が対応。内容証明作成のみなら30,000円程度 |
上記金額は「報酬」の目安であり、登録免許税、公正証書の作成手数料、郵送料等の実費は別途発生します。
離婚協議書+公正証書作成など、複数業務をセットで依頼すると割引されることもあります。
難易度や相談回数によって変動するため、正式な見積もりは必ず事前に取得しましょう。
司法書士に離婚業務を依頼するメリット3つ
①費用を抑えられる
弁護士に比べて司法書士の報酬は一般的に低めに設定されており、書類作成や登記など明確な業務に特化している分、無駄な費用が発生しにくい点が特徴です。
争いがなく、合意済みの内容を法的に整えるだけの離婚であれば、司法書士へ依頼することで費用を抑えながらも、法的に有効な書面を作成することが可能です。
②書類作成に精通している
司法書士は登記や契約書、公正証書などの法的文書作成を専門とする国家資格者です。
離婚協議書や公正証書の文案も、法的に有効かつ実務に耐え得る内容で作成できるため、将来的なトラブル予防になります。
内容に不備があると裁判で無効となる可能性もあるため、専門家に作ってもらうことは安心につながります。
③不動産登記まで一貫して対応できる
財産分与で不動産が絡む場合、名義変更登記が必要になります。司法書士は登記のプロであり、離婚協議書の内容に基づいてそのまま法務局への登記申請まで一貫して対応可能です。
弁護士に依頼した場合でも登記は司法書士に外注されることが多いため、直接依頼することで手続きの手間とコストを削減できます。
司法書士への依頼に向いているケース
①離婚条件がすでに合意済みの場合
夫婦間で財産分与・親権・養育費などの条件について話し合いが済んでおり、「あとは書面化するだけ」という状況では、司法書士の得意分野である協議書作成や登記手続きで迅速・低コストに対応してもらえます。
②不動産の名義変更を伴う財産分与がある場合
持ち家などの不動産をどちらかの単独名義に変更する必要がある場合、登記の専門家である司法書士が正確・確実に名義変更登記を代行できます。
必要書類の確認から登記申請まで一貫対応してくれるため手間がかかりません。
司法書士への依頼に向いていないケース
①離婚条件で相手と争いがある場合
慰謝料や養育費、親権などで相手と揉めている状況では、交渉や調停・訴訟対応が必要になるため、司法書士では対応できません。
このようなケースでは、交渉代理や法廷代理が可能な弁護士への依頼が適切です。
②請求額が140万円を超える場合
司法書士が代理できるのは140万円以下の簡易裁判所での請求に限られており、それを超える金額の請求では訴訟代理権がないため対応できません。
慰謝料・財産分与の高額請求を行う予定がある場合は、弁護士の関与が必須です。
司法書士に依頼するときの流れ
ステップ | 内容 |
①相談 | 電話やWEBフォームなどで初回相談を予約。無料相談の有無も確認。 |
②面談 | 離婚の合意内容、財産状況、不動産の有無などを詳しく確認。 |
③見積り・契約 | 業務内容に応じた費用とスケジュールを提示。納得後に契約書を締結。 |
④実行 | 離婚協議書、公正証書の文案作成や登記手続きなどを司法書士が進行。 |
⑤完了・引渡し | 完成した書類の確認・引渡し。必要に応じてアフターサポートあり。 |
離婚業務を任せる司法書士の選び方
①離婚業務の実績があるか確認する
司法書士にも得意分野があり、離婚関連の書類作成や登記手続きに慣れている人と、そうでない人では対応の精度やスピードに差が出ます。
ホームページや面談時に「離婚協議書作成の実績」「財産分与登記の経験」などがあるか確認し、具体的な事例を紹介してくれる司法書士は信頼性が高いと言えます。
実務経験が豊富な事務所ほど、複雑なケースにも柔軟に対応できます。
②説明が丁寧でわかりやすいか
専門用語を多用せず、依頼者の立場に立って丁寧に説明してくれる司法書士は安心して任せられます。
離婚に関わる手続きは初めてという方がほとんどなので、難解な法的文書や費用の内訳をかみ砕いて説明してくれる姿勢が重要です。
相談時に質問への対応が曖昧だったり、不明点を流されたりするようであれば、他の司法書士も検討しましょう。
③費用が明確で見積もりが丁寧か
信頼できる司法書士は、初回相談の段階で業務内容ごとの費用を明示してくれます。
報酬と実費(公正証書作成費や登録免許税など)を分けて説明し、追加費用がかかる場合の条件もしっかり提示してくれるかを確認しましょう。
「一式〇万円」といった曖昧な表記だけで済ませる事務所には注意が必要です。見積書を出してくれる事務所は誠実な対応が期待できます。
まとめ
離婚に関する悩みは人それぞれですが、争いのない離婚や不動産の名義変更、書類作成を中心とする場合には、司法書士への相談が安心かつ費用を抑えた選択肢になります。
まずは一人で悩まず、信頼できる司法書士に問い合わせてみてください。専門家のサポートで、スムーズな手続きが実現できます。
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